院長のとっておきの話

RAMPAという装置

先日、当院にセカンドオピニオンを求めて来院した患者の母親から、RAMPAという装置の存在を聞きました。他院で、現在9歳である患者は、この治療を受けるにはギリギリの年齢で、少しでも早く始めた方がよいと勧められたそうです。
母親によると、アメリカでの先進的方法で(少なくとも母親はそう聞いたと言っていますが、勘違いかもしれません)RAMPAというものを用い、顎の成長をコントロールすることによって、気道を広げたり、顔の形を整えることが可能で、出っ歯・下あごの小ささ・口がぽかんと開いていること・集中力のなさ・姿勢の悪さ等が改善されるとの説明を受けたようです。しかし、RAMPAで治療を受けた小児患者の術後の経過を追っている症例をみせてもらうことはできませんでした。
はっきり言って、このRAMPAという装置、インターネットで見た限り、私の40年近い臨床経験の中で、最も奇想天外な装置の一つです。まず、何にでも効果があるというような治療は、普通は眉唾と考えた方がよいと思いませんか?大抵の治療には作用反作用があり、すべてに効果的というような治療は疑うべきです。毎年アメリカ矯正歯科学会にも参加していますが、もしアメリカの治療法で、ある程度の成果が挙げられていれば、必ず学会での発表があっていいはずですが、名前を聞いたことすらありません。
また、子供の成長のピークは、男児は13~15歳、女児は11~13歳頃です。この成長ピークの時期の前に、上あご又は下あごの拡大という顎位を不安定にするような治療を行うことは、かえって下あごの成長(この母親の一番の関心事)にネガティブな影響を与えてしまう可能性すら感じます。
もし現在このRAMPAという装置を用いることを勧められている時、もう一度よく考えてくれると幸いです。矯正治療は私の人生を捧げてきた素晴らしい治療です。しかし、この様な装置を用いることが、小児のあごの成長発育にとって有益であるとは、到底思えないのです。

2019年10月25日 14:24

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